ラプラス変換・抄
目次
- ラプラス変換の基本性質
- 畳み込み
- 具体的な関数のラプラス変換
- ラプラス逆変換
- 微分方程式のラプラスによる解法
- 超関数デルタ
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ラプラス変換の基本性質
変域[+0,∞]で定義される関数f(t)のラプラス変換を
F(s) = ![∫[0,∞]](../img/integratezerotoinfinity.png)
f(t)・dt ---(1)
で定義し、F(s)=L{f(t)}で表す。これが収束しない物については不思議不定義。
Lは積分であることから、次の定理
L{c・f(t)} = c・L{f(t)} (cは定数) ---(2)
L{f(t)+g(t)} = L{f(t)}+L{g(t)} ---(3)
L{f(t)}=F(s)の時
L{f(at)}=(1/a)F(s/a) ---(4)
[証明]
L{f(at)}=![∫[0,∞]](../img/integratezerotoinfinity.png)
f(at)・dt
u=atで置換すると、
t=u/a, dt=du/aであるので、
L{f(at)}=∫0∞e-(s/a)t・(du/a)
=F(s/a)/a (/証明終)
L{∫0tf(x)dx} = F(s)/s ---(5)
[証明]
(左辺)=![∫[0,∞]](../img/integratezerotoinfinity.png)
∫0tf(x)dxdt
=[(-1/s)
∫0tf(x)dx]0∞+
(1/s)
f(t)dt
=F(s)/s (/証明終)
L{t・f(t)} = -F'(s) ---(6)
[証明]
-F'(s) = -(d/ds)F(s)
= -
(∂/∂s)
f(t)dt
=・・・=L{tf(t)} (/証明終)
これを繰り返し用いれば、
L{tn・f(t)} = (-1)nF(n)(s)
となることが分かる(証明は帰納法による)。
L{f(t)/t} = ∫s∞F(s)ds ---(7)
[証明]
(右辺) = ∫0∞∫s∞
f(t)ds・dt
= ∫0∞[-
f(t)/t]s∞dt
= ∫0∞
f(t)/t・dt
= … = L{f(t)/t} (/証明終)
L{y(n)} = -y(n-1)(+0)-s・y(n-2)(+0)-s2・y(n-3)(+0) … -sn-1・y(+0)+snL{y} ---(8)
[証明]
L{y(n)}=![∫[0,∞]](../img/integratezerotoinfinity.png)
y(n)dt
=[
y(n-1)]0∞-
(-s)
y(n-1)dt (部分積分)
= … =[
y(n-1)]0∞+[
y(n-2)]0∞+[
y(n-3)]0∞+ … +[
y(n-4)]0∞+sn![∫[0,∞]](../img/integratezerotoinfinity.png)
y・dt
=(右辺)
定義上、y(x)がx=0で不連続、または不定義でも構わない為、y(0)はy(+0)を意味する。
L{eatf(t)} = F(s-a) ---(9)
[証明]
u=s-aとかで積分 (/証明終)
畳み込み
xに関する二つの関数f,gの畳み込みを
f*g(t) = ∫0tf(x)g(t-x)dx
で定義する。
f*g=g*fが成り立つ。
L{f*g(t)} = L{f(t)}・L{g(t)} ---(10)
[証明]
u=t-x
とかで積分する。
x,tの積分では、x;0→t, t;0→∞
の範囲であるが、
u,xの積分では、x;0→∞, u;0→∞
となる。またdxdt=dxdu。 (/証明終)
具体的な関数のラプラス変換
L{tn} = n!/sn+1 (tは0を含む自然数) ---(11)
L{tα} = Γ(α+1)/sα+1 (αは実数) ---(12)
[証明;実際に計算すれば良い]
L{tα} =
tα
dt
st=uで置換。
Γ(α+1)=
e-uuαdu
である事から成立する。
自然数nについて
Γ(n+1)=n!も使えば
(12)⇒(11)も成立 (/証明終)
L{sin(at)}=a/(a2+s2) ---(13)
L{cos(at)}=s/(a2+s2) ---(14)
[証明;具体的に計算するか、次次章を参考に。/]
ラプラス逆変換
L{f(t)}=F(s) ⇔ L-1{F(s)}=f(t)
L-1をラプラス逆変換という。ラプラス変換は一意性を持つ。
一般に逆変換を計算するのは困難であるから、予め凡その関数についての
ラプラス変換を計算しておき、表にしておき、それを逆に辿ればよい。
微分方程式のラプラス変換による解法
係数が定数(常微分方程式)の例
一般に微分方程式の両辺をラプラス変換して、ラプラス逆変換するだけ。
#f(t)+f"(t)=0, f(0)=0, f'(0)=1
//この解f(t)は明らかにsin(t)が解である。f'(0)=aとすれば、(13)の証明に使える。
両辺のラプラス変換を取る。
L{f(t)+f"(t)}=L{0}
⇔L{f(t)}+L{f"(t)}=0
(8)より
L{f"(t)} = -f'(0)-s・f(0)+s2・L{f(t)}
であるから、これを代入して
-1+(s2+1)L{f(t)}=0
∴L{f(t)}=1/(s2+1)
∴f(t)=L-1{1/(s2+1)}
(13)の逆にa=1を代入すれば
L-1{1/(s2+1)} = sin(t)
であるから、
f(t)=sin(t) []
#f'(x)+2f(x)+1=0, f(0)=0を解け。
係数が関数の例
常微分方程式の場合に加え、(6)を使う。
a・y'+b・y=0 (yはxの関数、a,bはxの関数か定数か。)
という形に帰着させたら、普通に解く。
即ち
y'/y=-b/a
と変形して、両辺をxで不定積分すれば
log(y)=∫(-b/a)dx+C
となり、容易に解ける。
#x・f'(x)-2f(x)=0, f(1)=1
両辺にラプラス変換を施して
L{x・f'(x)}-2L{f(x)}=0
(6)を用いて
-L{f'(x)}'-2L{f(x)}=0
⇔-{-f(0)+sL{f(x)}}'-2L{f(x)}=0
⇔-s・L{f(x)}'-3L{f(x)}=0
F(s)=L{f(x)}として
F'(s)/F(s) = -3/s
両辺をsで積分して
log(F(s)) = -3log(s)+C (Cは定数)
⇔F(s) = A・s-3 (Aはexp(C)だけど、まあ定数)
ラプラス逆変換を施し
f(t) = B・t2 (BはA/2だけど、まあ定数)
条件から
f(t=1)=B=1
∴f(t)=t2 []
係数が関数な方程式に比べ、定数の場合は非常に用意。
例えば二階常微分方程式
Ay"+By"+Cy=0
を解いてみる。
A・L{y"}+B・L{y'}+C・L{y}=0
(8)を使いまくれば
L{y}=(αs+β)/(γs2+δs+ε) (α〜εは何か定数)
=1/{(s-a)・(s-b)}
=Ё/(s-э)+Щ/(s-ш)
ここで
L{Ё}=Ё/s, L{Щ}=Щ/sなのと、
(9)より
y=Ё・eэt+Щ・eшt
という形に出来る。
ただし、э,шが実数として存在するかは
At2+Bt+Cの判別式による。
超関数デルタ(デルタ関数、衝撃関数、単位インパルス関数)
L{f(t)}=(定数)
となるf(t)はマトモじゃない。
(定数)=0ならば、もちろんf(t)=0であるが、
≠0の時、定義の式(1)を見て分かるように
左辺がsのn次式なら、右辺もsのn次式。
は無限次式であろうが、左辺が常に定数、ゼロ次式なのだから、f(t)は
を中和するような関数である。
超関数デルタというものがあります。
任意の関数f(x)について
∫-∞∞δ(x)f(x)dx=f(0)
が常に成り立つ関数がδ(x)の定義です。
特徴として
f(x)に都合のいいものを入れてみれば実験的に分かるように、
δ(x) = ∞(x=0)
0(x≠0)
∫-∞∞δ(x)dx = 1
L{δ(t)} = 1
[証明]
ヘビサイドの単位関数U(x)を考える。
U(x)= 0 (x<0)
1/2 (x=0)
1 (x>0)
とすると、
U'(x) = 0 (x≠0)
(+∞) (x=0)
であるから、U'=δ(∫-∞∞δdx=U(∞)-U(-∞)=1)。
ここで
L{U}=![∫[0,∞]](../img/integratezerotoinfinity.png)
1dt=1/s
となるので
∴L{U'} = -U(+0)+sL{U}=1
即ちL{δ}=1 (/証明終)