ラプラス変換・抄


    目次
  1. ラプラス変換の基本性質
  2. 畳み込み
  3. 具体的な関数のラプラス変換
  4. ラプラス逆変換
  5. 微分方程式のラプラスによる解法
  6. 超関数デルタ
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ラプラス変換の基本性質 変域[+0,∞]で定義される関数f(t)のラプラス変換を F(s) = ∫[0,∞]exp(-st)f(t)・dt ---(1) で定義し、F(s)=L{f(t)}で表す。これが収束しない物については不思議不定義。
Lは積分であることから、次の定理 L{c・f(t)} = c・L{f(t)} (cは定数) ---(2) L{f(t)+g(t)} = L{f(t)}+L{g(t)} ---(3)
L{f(t)}=F(s)の時 L{f(at)}=(1/a)F(s/a) ---(4) [証明] L{f(at)}=∫[0,∞]exp(-st)f(at)・dt u=atで置換すると、 t=u/a, dt=du/aであるので、 L{f(at)}=∫0e-(s/a)t・(du/a)     =F(s/a)/a  (/証明終)
L{∫0tf(x)dx} = F(s)/s ---(5) [証明] (左辺)=∫[0,∞]exp(-st)0tf(x)dxdt    =[(-1/s)exp(-st)0tf(x)dx]0+∫[0,∞](1/s)exp(-st)f(t)dt    =F(s)/s  (/証明終)
L{t・f(t)} = -F'(s) ---(6) [証明] -F'(s) = -(d/ds)F(s)     = -∫[0,∞](∂/∂s)exp(-st)f(t)dt     =・・・=L{tf(t)}  (/証明終) これを繰り返し用いれば、 L{tn・f(t)} = (-1)nF(n)(s) となることが分かる(証明は帰納法による)。
L{f(t)/t} = sF(s)ds ---(7) [証明] (右辺) = ∫0sexp(-st)f(t)ds・dt     = ∫0[-exp(-st)f(t)/t]sdt     = ∫0exp(-st)f(t)/t・dt     = … = L{f(t)/t}  (/証明終)
L{y(n)} = -y(n-1)(+0)-s・y(n-2)(+0)-s2・y(n-3)(+0) … -sn-1・y(+0)+snL{y} ---(8) [証明] L{y(n)}=∫[0,∞]exp(-st)y(n)dt     =[exp(-st)y(n-1)]0-∫[0,∞](-s)exp(-st)y(n-1)dt (部分積分)     = … =[exp(-st)y(n-1)]0+[exp(-st)y(n-2)]0+[exp(-st)y(n-3)]0+ … +[exp(-st)y(n-4)]0+sn∫[0,∞]exp(-st)y・dt     =(右辺) 定義上、y(x)がx=0で不連続、または不定義でも構わない為、y(0)はy(+0)を意味する。
L{eatf(t)} = F(s-a) ---(9) [証明]  u=s-aとかで積分  (/証明終) 畳み込み xに関する二つの関数f,gの畳み込みを f*g(t) = ∫0tf(x)g(t-x)dx で定義する。 f*g=g*fが成り立つ。
L{f*g(t)} = L{f(t)}・L{g(t)} ---(10) [証明] u=t-x とかで積分する。 x,tの積分では、x;0→t, t;0→∞ の範囲であるが、 u,xの積分では、x;0→∞, u;0→∞ となる。またdxdt=dxdu。 (/証明終) 具体的な関数のラプラス変換 L{tn} = n!/sn+1 (tは0を含む自然数) ---(11) L{tα} = Γ(α+1)/sα+1 (αは実数) ---(12) [証明;実際に計算すれば良い] L{tα} = ∫[0,∞]tαexp(-st)dt st=uで置換。 Γ(α+1)=∫[0,∞]e-uuαdu である事から成立する。 自然数nについて Γ(n+1)=n!も使えば (12)⇒(11)も成立  (/証明終) L{sin(at)}=a/(a2+s2) ---(13) L{cos(at)}=s/(a2+s2) ---(14) [証明;具体的に計算するか、次次章を参考に。/] ラプラス逆変換 L{f(t)}=F(s) ⇔ L-1{F(s)}=f(t) L-1をラプラス逆変換という。ラプラス変換は一意性を持つ。 一般に逆変換を計算するのは困難であるから、予め凡その関数についての ラプラス変換を計算しておき、表にしておき、それを逆に辿ればよい。 微分方程式のラプラス変換による解法 係数が定数(常微分方程式)の例 一般に微分方程式の両辺をラプラス変換して、ラプラス逆変換するだけ。
#f(t)+f"(t)=0, f(0)=0, f'(0)=1  //この解f(t)は明らかにsin(t)が解である。f'(0)=aとすれば、(13)の証明に使える。 両辺のラプラス変換を取る。 L{f(t)+f"(t)}=L{0} ⇔L{f(t)}+L{f"(t)}=0 (8)より L{f"(t)} = -f'(0)-s・f(0)+s2・L{f(t)} であるから、これを代入して -1+(s2+1)L{f(t)}=0 ∴L{f(t)}=1/(s2+1) ∴f(t)=L-1{1/(s2+1)} (13)の逆にa=1を代入すれば L-1{1/(s2+1)} = sin(t) であるから、    f(t)=sin(t)   []
#f'(x)+2f(x)+1=0, f(0)=0を解け。
係数が関数の例 常微分方程式の場合に加え、(6)を使う。 a・y'+b・y=0 (yはxの関数、a,bはxの関数か定数か。) という形に帰着させたら、普通に解く。 即ち y'/y=-b/a と変形して、両辺をxで不定積分すれば log(y)=∫(-b/a)dx+C となり、容易に解ける。
#x・f'(x)-2f(x)=0, f(1)=1 両辺にラプラス変換を施して L{x・f'(x)}-2L{f(x)}=0 (6)を用いて -L{f'(x)}'-2L{f(x)}=0 ⇔-{-f(0)+sL{f(x)}}'-2L{f(x)}=0 ⇔-s・L{f(x)}'-3L{f(x)}=0 F(s)=L{f(x)}として F'(s)/F(s) = -3/s 両辺をsで積分して log(F(s)) = -3log(s)+C (Cは定数) ⇔F(s) = A・s-3 (Aはexp(C)だけど、まあ定数) ラプラス逆変換を施し f(t) = B・t2 (BはA/2だけど、まあ定数) 条件から f(t=1)=B=1 ∴f(t)=t2  []
係数が関数な方程式に比べ、定数の場合は非常に用意。 例えば二階常微分方程式 Ay"+By"+Cy=0 を解いてみる。 A・L{y"}+B・L{y'}+C・L{y}=0 (8)を使いまくれば L{y}=(αs+β)/(γs2+δs+ε)  (α〜εは何か定数)   =1/{(s-a)・(s-b)}   =Ё/(s-э)+Щ/(s-ш) ここで L{Ё}=Ё/s, L{Щ}=Щ/sなのと、 (9)より y=Ё・eэt+Щ・eшt という形に出来る。 ただし、э,шが実数として存在するかは At2+Bt+Cの判別式による。
超関数デルタ(デルタ関数、衝撃関数、単位インパルス関数) L{f(t)}=(定数) となるf(t)はマトモじゃない。 (定数)=0ならば、もちろんf(t)=0であるが、 ≠0の時、定義の式(1)を見て分かるように 左辺がsのn次式なら、右辺もsのn次式。 exp(-st)は無限次式であろうが、左辺が常に定数、ゼロ次式なのだから、f(t)はexp(-st)を中和するような関数である。 超関数デルタというものがあります。 任意の関数f(x)について ∫-∞δ(x)f(x)dx=f(0) が常に成り立つ関数がδ(x)の定義です。 特徴として f(x)に都合のいいものを入れてみれば実験的に分かるように、 δ(x) = ∞(x=0)     0(x≠0) ∫-∞δ(x)dx = 1 L{δ(t)} = 1 [証明] ヘビサイドの単位関数U(x)を考える。 U(x)= 0  (x<0)    1/2 (x=0)    1  (x>0) とすると、 U'(x) = 0   (x≠0)     (+∞) (x=0) であるから、U'=δ(∫-∞δdx=U(∞)-U(-∞)=1)。 ここで L{U}=∫[0,∞]exp(-st)1dt=1/s となるので ∴L{U'} = -U(+0)+sL{U}=1 即ちL{δ}=1  (/証明終)