日記 intime o'
「青色しかないUNOカード」の補足 - tale 2009/10/23(Fri.)UNOカードは以下で構成される。 1組={ 黄・青・赤・緑の各4色について 「0:1枚,1~9:2枚,Skip,Reverse,DrawTwo:2枚」、 Wild:4枚,WildDrawFour:4枚 }; これを二組用意すると麻雀が行える。 即ち、1~9を三色・四枚ずつが数牌、Skip,Reverse,DrawTwoが三元牌、 Wild,WildDrawFour,残り色のDrawTwoが風牌。 とすると、4色の0と、ある一色の1~9,Skip,Reverseが手元に残る。 残った。黄色→萬子、赤色→筒子、緑色→索子。 青色ばかりが残った。他の136枚は没収された。UNOなのに。 --- 『吾輩は猫である』の面白いのは言わずもがな、主人公が猫なのである。 小説の書き方にもある程度の定石があって、主人公を一人の人間に設定すると、 その他の人物の心情は直接書けない。人間の心情は自分自身のものしか分から ないから。仕方が無いので、涙を流したとか、両手をあげて喜んだ、というヒ ントを付けるしかない。しかし、いくつかの小説では複数人の心の内を詳細に 書くことがあって、よくこれを神の視点と呼ぶ。神は天上から人間どもの世界 を覗き込み、そして心の内を読むことができる。神は地上に降り立ち猫となっ た。猫は心情を読むことは出来ないが、世間話をいともたやすく、罪悪感ナシ に盗み聞きする。 Aは皆から天才と銘打たれており、例えば味噌汁を主食にしており、ではライス は何だと尋ねるとおかずだと答えるという奇行も天才だという箔をますます着ける。 「食物連鎖の被食側だけが輪廻の輪から外れることができるんだろう。」 Bは愚人としか思われていない。Aと同じ学校にいるのが奇妙に思われるそうで、 もしや親のコネか、まさか裏金かと噂されたが、家の貧乏が公になって結局入学試 験の採点ミスということで落ち着いた。Bも、もしかしたらそうかもしれない、と 思った。そんな噂も風化して愚人だということだけ残った。 「すると、輪廻の中の魂は減る一方じゃないか。そうか、2012年に予言された世界 の破滅と動物絶滅とを照らし合わせると、それだな。魂がゼロになるんだ。」 Bはオカルトめいた物が大好きだった。物理の話をしていて、ボールを真上に投げ るという問題で急に霊の話をしだした時は驚いたが、それでもまあ私はBと仲良く やった。Bが莫迦と思われていても、思想はともかくもっと根本の精神は同じだし 、実際莫迦だと思ったことはない。 「マヤ文明によれば世界は既に四回滅んだんじゃなかったっけ。」 「そう。隕石、洪水、干ばつ、火事とね。」 自分は自分の興味のあることについては、いくつも文書を求めて読むから、人一倍 の知識に自信があるが、しかし、Aは興味なくとも一度聞いた話は絶対に忘れない から凄い。 「まあきっとどこかで製造も行われてるんだよ。」 「うん。ああ、分かった。うんそうだ。けど、これは、率直に言いたくないかも」 AとBが(少なくとも見た目の上で)仲を保ってられるのは、非常識なことを不遠慮 に言い合うことにあって、決して感情的にならないことにある。もっと根本を言え ばAは全てを受けとめ、Bは口論を少しだけ好んだ。 Aは大して興味もないのか、小型の電子ゲームの画面からずっと目を離さなかっ た。 「うん。きっとね、人間が増えて、供給に間に合わずやむを得ず、他の動物を今絶 滅してるんだよ。」 やはりゲームから目を離さず 「輪廻ってのは証明できるのかあな」 「おい、見ろよ。ああいうアスリートは自分のことを素敵とか思ってるんだろうよ。」 そう言ってメガネを弄り始めた。 文字にすれば、一分十秒で話せるような話だが、実際は随分長く感じた。事実彼ら は二十分ほどかけてそれらを話した。一人が一つ述べて、彼らはUNO(カード遊戯の 一種)をしていたのだが、カードを一枚ずつ机に置くのを暇そうに五回程交互に繰 り返して、それからやっともう一人が述べて、という具合。Aは更に電子ゲームを しながらだから、仕方ないにしても、Bの方はそのUNOと会話以外に何もしていない のに、UNOにも会話にも別段集中していないようで、二人は UNOに於いて自分の勝ち を目指してゲームをしてるように見えなかった。Bは学校一の莫迦という噂であるが 、恐らく、感情を素直に100%で(大袈裟にすでもなく、控えめにすでもなく)顔に出す のがいけないのだと思う。 「世の中って理不尽だろ。」 「え?」 「理不尽なことだらけじゃないか。」 「そうかな。実に合理的だよ。美しいコードさ。」 「そりゃあお前は、得してる層だからさ。自分は損ばかりしてる層でよ。二層の間に 何があるのか、ちょっと見にいかないか?」 「何処に行くって?能古島でも行くか?今は紅葉が綺麗だろうね。」 「知らん。どうだっていいさ。今日は一つ、スノビズムと行こうぜ。」 AとBは本当は仲がいいのかしら分からない。至極当然のように、当然故に一切言及 せずにカードゲームを続けていた。 青色しかないカード、昔ゲームに負けたから。
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