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日記 intime o'

Bガム工業 その2 - tale 2008/11/14(Fri.)
 夕日を望みながら、というのも悪くない。確かあの時、私はそう考えていた。
いつもなら家に帰るのはとうに陽の沈んだ時間だったが、あの日に限って5時に
は家に着くという時間に会社を出ることができた。家に最寄の駅で電車を降り、
改札を抜けて直ぐの階段を上りながら、階段に反射する夕日の光を見て、たしか
そうつぶやいた。

 階段を上ると直ぐに絵が何面も飾ってあるのが見えた。露店であった。ほとん
どは、人形や風景の絵といった誰にでも分かるような絵の中で一枚だけ難解な物
があったので、よく見ようと近くで見ると、なんてことのない、複数の人間が漂
って、まるでスカイダイビングをしている様子を上のヘリコプターから覗いたよ
うな普通の絵。それよりも露店であるのに店の者がいないので不審に思っている
と、大きな絵の後ろに隠れて、外国人が小さな椅子に座っていた。足元にはひま
わりを含めたいくつかの種類の花を壺に差した小さな絵があった。私はまずその
絵を何者かの家の壁に掛けてある様子を想像した。非常に好い。ただ、額縁がな
いとまずい。そこに並べられた売り物の絵には当然ながら全てむきだしの上体で
ある。

 私は店の主に話しかけてみることにした。一瞬、日本語でも通じるのか、と躊
躇ったが、私はいつも考えているのは『日本にくる以上、外国人は日本語を最低
限しっておかなければいけない。』。フランス人なんてのは自分の母国語が最も
洗練されたものだと、考えているのか、別の国を訪れるのに、わざわざその国の
言語を学ばないらしい。しかし、それは違う。壕に入りては壕の規則を律せよ、
だ。
「この絵、額縁に入っていればそれはもう、綺麗でしょうね。」
ただ、そう言っていた。思ったよりも全然流暢な日本語で何か返事をしていた。
値段のことか、何か。私は急いで家に帰ってしまった。自分の意思抜きで、勝手
に足が動いていた。

 十分ほど経っただろうか。早歩きでさっきの男は脇に大きな板を抱え、こっち
に来た。微かな笑いは逆に不気味さを見せた。
「どうです、綺麗でしょう。」
男はさっきの板、それは思った通り額縁だったのだが、に絵を断りもなく入れて
、地べたに立ててこちらに見せた。
「悪いが、そんな高そうな額縁を貰う訳にはいかない。」

 実は私もそう思っていた。思いつきで家に大事に保管してあった額縁からサイ
ズの合いそうなのを持ってきたが、これは結構値段がする。ただ綺麗だから、入
れてみただけで、本当にくれてやるつもり等さらさら無かった。いや、別にこの
外国人の言ったことを責めるつもりなど、一切無いが。
「じゃあ、こうしましょう。私がこの絵を買います。いくらでしょう。」
外国人の店主は値段を告げ、私は大体この額縁と同等の値段だと伝えた。交渉は
案外簡単にいった。この円高で外国人もなかなか大変らしいのだ。
「額縁は差し上げます。代わりにこの絵は貰います。オーケー?」
思わず最後にオーケー等と下手な英語を入れたのなんかは滑稽だが、うまく了承
してくれた。私は随分豪華な額縁に入ったな絵を脇に抱え家に帰った。


枚方圏内著「Bガム工業 その2」より

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